顎顔面矯正とは?小児期に始める理由と治療の流れを専門医が解説
お子さんの歯並びや口呼吸が気になっていませんか?
近年、顎が小さく歯並びがガタガタになるお子さんが増えています。実は、これは単なる見た目の問題ではなく、呼吸や全身の健康にも影響する可能性があるのです。
当院では、小児期の成長を利用した「顎顔面矯正」という治療法に力を入れています。この治療は、顎の骨そのものを広げることで、歯並びだけでなく鼻呼吸の改善や全身の健康にもつながる可能性があります。
この記事では、顎顔面矯正の仕組みや始める時期、治療の流れについて、歯科医師の立場から詳しくお伝えします。

目次
顎顔面矯正とは何か?従来の矯正との違い
顎顔面矯正は、顎の成長を利用して骨格から整える小児矯正の一種です。
従来の矯正治療では、顎の骨に収まりきらない歯を抜いて、ブラケットを用いて歯をキレイに並べていくのが一般的でした。つまり、限られたスペースに歯を無理やり並べる方法です。
それに対して顎顔面矯正では、骨格が固まる前に顎の骨の成長を促します。顎の骨を広げておくことで、永久歯が生えてきた時、本来並ぶべき位置にキレイに収めることができるのです。
例えるなら、3人掛けのベンチに5人が座ろうとすると、飛び出してしまう人が出てしまいますよね。顎顔面矯正は、ベンチそのものを大きくして、全員がゆったり座れるようにする治療法なんです。
当院では、この顎顔面矯正を「究極の予防治療」だと考えています。なぜなら、歯並びが悪くなる根本的な原因から治すことができるからです。
現代の子供に顎顔面矯正が必要な理由
なぜ今の子供たちに顎顔面矯正が必要なのでしょうか?
近代においては、軟らかい食事が主体となり、「良く噛む」必要がなくなったため、噛むための筋肉「咀嚼筋の発育不全」が起こり、「上顎の発育不足」が起こり、「下顎の発育不足」が起こります。
さらに栄養状態は良くなったため、一本一本の「歯の大きさの大型化」が起きてきています。顎骨の小型化と歯の大きさの大型化が同時に存在しているため、小さな顎に大きな歯は並びきらず、ぐちゃぐちゃに生えてきてしまうということが起こり、歯の生えそろうスペースが足りなくなってきています。
カレーやハンバーグ、アイスクリームやスナック菓子など、現代の子供が大好きな食べ物は、しっかりと噛まなくても食べることができます。そのため顎が小さくなるにも関わらず、歯は大きく、歯の数は変わらないので、歯が顎に入りきらなくなってしまうのです。
子供の早い時期にこのような顎の状態が把握できると、顎の骨の成長を促してあげることができます。そして、自然にキレイな歯並びをつくることができるのです。
顎顔面矯正で期待できる効果とメリット
顎顔面矯正は、歯並びを整えるだけではありません。
上顎を広げることで気道や鼻腔も広がり、鼻呼吸がしやすくなります。これにより、睡眠時無呼吸症候群のリスクの低減や様々な健康上のメリットが期待できるのです。
鼻呼吸の促進と全身の健康への影響
上顎の発育が悪いと鼻での呼吸が困難です。鼻で呼吸ができないと、口で呼吸するようになります。
習慣的な口呼吸は、次のような症状の原因になります。鼻づまりや鼻炎の症状、いびきをかく、昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群、ぜんそくやアトピー等のアレルギー、食べ物が噛みにくいなどです。
顎の骨の成長を促す顎顔面矯正では、鼻の通りがよくなり、正しい呼吸法が身に付きます。よって、このような症状への改善も期待できると注目されています。
口呼吸をしていると、空気中のばい菌が喉から体内に入ったり、口の中が乾燥してむし歯になりやすい状態をつくったりします。また、無呼吸症候群など睡眠障害を引き起こすこともあります。
当院では、鼻呼吸の習慣化を非常に重要視しています。歯並びや健康のために、鼻呼吸の習慣化が必要不可欠だからです。
歯並び改善以外のメリット
正しいかみ合わせを作ることで、無理な咬合力がかかることを防ぎ、歯を守ることにもつながります。
歯並びがキレイに整っていることで、清掃しやすく、むし歯の予防にもつながります。かみ合わせを整えることで脳の機能が活性化して記憶力にも良い影響があるとされています。
良い発音となり、歯の怪我の防止につながります。歯並びや顔貌が改善して笑顔が増えるという心理的なメリットもあります。
おおむね十分な拡大が行われれば、歯の生えるスペースは確保できるため、歯列矯正(成人矯正)が必要にならないか、必要になったとしてもわずかな矯正で済むことが多く、負担が少なくて済むことが多いです。ただし、100%必要がなくなるわけではありません。
顎顔面矯正を始める最適な時期

顎顔面矯正は、成長期にしか受けられない治療です。
適切なタイミングで治療を開始することで、大人になった時にお口のことで困らない環境が作れるようになります。
3歳から8歳までが重要な理由
できるだけ早くからの小児矯正をおすすめします。
特に、鼻呼吸をするようになるかどうか、キレイな発音、姿勢や食べ方などについては、3歳~8歳までに発達するものとされています。この時期を過ぎてからの改善は期間や難易度が高くなるため、3歳くらいからの小児矯正をおすすめします。
上顎の成長は、5歳をピークに10歳くらいでほぼ成長が止まってしまいます。それに対して、下顎は幼少期と、思春期、別れて成長のスパートがあります。この成長スピードの違いと、成長の不足量により、上下顎の不調和が発生し、不正咬合が起こってしまうのです。
年齢的には6才から10才くらいまでの子供さんが治療の対象になります。個人差はありますが、10才を超えると、従来の大人の矯正治療になってしまう可能性が高いです。
当院では、できるだけ早期に診断をお受けいただき、治療を開始していただきたいと考えております。最低でも6~8才までには診断をお受け頂き、治療を開始していただきたいと考えております。
混合歯列期(6~12歳)の重要性
6歳頃~12歳頃の「混合歯列期(乳歯と永久歯の両方が混ざっている生え変わりの時期)」に行う小児矯正は、多くのメリットがあります。
専用の矯正装置を使用し、歯を並べるためのスペースを確保し、その後の、歯をキレイに並べるための「二期治療」に移行するための下地を作るといった意味合いの小児矯正です。
また、この時期では、下顎前突(受け口)や上顎前突(出っ歯)、あごの曲りなどで顔貌に影響が出たりしないよう、顎の骨が成長する力を利用して、上下のあごの骨のバランスを整えていくことが可能ですので、将来的に顎の骨に対する手術などを行うリスクを避けることにもつながります。
この時期に、歯の並ぶスペースをしっかり確保することで、二期治療に移行しても抜歯の必要がなくなったり、二期治療そのものが必要無くなったり、といったことも期待できる小児矯正です。
顎顔面矯正の治療の流れと使用する装置
顎顔面矯正では、どのような装置を使い、どのように治療を進めていくのでしょうか?
上顎急速拡大装置(RME)による治療
顎顔面矯正は、乳歯の時期や、混合歯列期(乳歯と永久歯が混ざっている状態)に行う治療です。
「上顎骨急速拡大装置(RME)」という矯正装置を使用して、上顎骨(鼻上顎複合体)の成長の力をコントロールし、立体的に、正しく健康的な成長を促し、顎の骨自体を広げ、正常な姿にもどしてあげることで、永久歯が健康に生えそろうためのスペースを作るものです。
装置を装着し、2~3ヶ月かけて顎を拡大します。広げ終わったら、その後小学校卒業程度まで1~3ヶ月に1回程度の間隔で維持管理をしていきます。その時に、姿勢のチェック、口腔周囲筋(舌や唇など)のトレーニングなども行う場合もあります。
当院では、症例の難易度や装置の製作数によって若干の変動がありますが、基本施術は330,000円~550,000円、分析料は33,000円となっています。状態によって急速拡大装置(RME)、床矯正装置を選択して施術いたしますが、両者での施術料金に変わりはありません。
装置の種類と特徴
当院では、お子さんの状態に応じて、以下のような装置を使い分けています。
ハイラックスタイプ:横方向に拡大するための装置(急速拡大)です。
ファンタイプ:扇状に拡大するための装置(中速拡大)です。
バラエティタイプ:乳歯列期にゆっくり拡大する装置です。
固定式急速拡大装置を使った矯正は、歯並びが悪くなる原因のアゴが小さいということに対して、アゴを大きくして治していきます。さらに、出っ歯や受け口も成長を利用してキレイに治すことができます。また、骨格から治すことができるので、歯を抜く確率もかなり下がります。
治療の段階と期間
顎顔面矯正の治療は、いくつかの段階に分かれています。
Step1:上顎の矯正
まずは「急速拡大装置」による上顎の成長促進を行います。期間は約半年〜1年間使用で上顎拡大により、一時期前歯の隙間が大きく開くことがありますが、上顎の拡大が終わると2~3ヶ月で自然と歯の隙間が無くなりますので心配ありません。
Step2:下顎の矯正
下顎の矯正は、上顎の矯正の後にスタートします。上顎の成長促進・拡大ができたころに下顎の矯正装置「舌側弧線装置」を使い始めます。装置は1年以上使用し、下顎は内側に倒れている歯をまっすぐに起こすことで歯並びを整えます。
Step3:仕上げ
「機能的矯正装置」による正しい噛み合わせの学習をして、下顎の位置を改善します。夜間使用・約1年使用となります。状態によっては行わなくて良い場合もあります。
Step4:治療後の再評価
成長後の矯正が必要かなどを検討します。
Step5:治療後の経過観察
生え変わり終了時まで、3ヶ月毎にチェックします。
治療の効果は、協力度や歯の生え変わり、顎の成長、その他によって変わります。治療計画は、状態や成長に合わせて変更します。
当院の顎顔面矯正へのアプローチ

当院では、顎顔面矯正を「究極の予防治療」と位置づけています。
専門的な診断と治療計画
お子さんの顎の成長状態、歯並びの状態、口腔習癖(指しゃぶりや舌癖など)を総合的に評価し、一人ひとりに最適な治療計画を立てます。
顎顔面矯正は、単に装置を装着するだけではありません。姿勢のチェック、口腔周囲筋(舌や唇など)のトレーニングなども必要に応じて行います。
当院の考えとしては、お子さんの将来にわたるお口の健康、キレイな歯並び、自信に満ちた笑顔のため、小児矯正は、お子様ご自身ではできません。ご両親だからこそ出来ることです。美しく健康な歯並びは、将来への素晴らしいプレゼントとなることでしょう。
親子で取り組む治療
顎顔面矯正の成功には、ご家族の協力が不可欠です。
装置の管理、定期的な通院、口腔習癖の改善など、ご家庭でのサポートが治療効果を大きく左右します。
当院では、親子で安心して治療を受けることができるよう、丁寧な説明とサポートを心がけています。治療中の不安や疑問にも、随時お答えしています。
欧米では、歯並びの良さは社会的に成功するための必要条件ともされている側面があります。小児矯正で、お子さまの将来の歯並びをプレゼントできるのはご両親だけです。
よくある質問(Q&A)
Q1:顎顔面矯正は痛みがありますか?
装置を調整した直後は、多少の違和感や圧迫感を感じることがありますが、数日で慣れることがほとんどです。痛みの程度には個人差がありますが、我慢できないほどの痛みが続くことは稀です。
Q2:治療期間はどのくらいかかりますか?
上顎の拡大に約半年〜1年、その後の維持管理を含めると、小学校卒業程度まで定期的な通院が必要です。治療を始める時期が早いほど、治療期間は短くなる傾向があります。
Q3:装置は目立ちますか?
当院で使用する装置は、取り外せない固定式ですが、外から見えにくく目立ちにくいものとなっています。慣れが早く、お子さんの日常生活への影響は最小限に抑えられます。
Q4:治療後に後戻りすることはありますか?
顎顔面矯正は骨格から治す治療のため、適切に治療を行えば後戻りのリスクは低いです。ただし、治療後も定期的なチェックと、必要に応じた保定装置の使用が重要です。
Q5:費用はどのくらいかかりますか?
当院では、基本施術が330,000円~550,000円、分析料が33,000円となっています。症例の難易度や装置の製作数によって若干の変動があります。詳しくは、初診時にご説明させていただきます。
まとめ:お子さんの健康な未来のために
顎顔面矯正は、お子さんの成長期にしかできない、特別な治療法です。
歯並びを整えるだけでなく、鼻呼吸の促進、全身の健康、そして自信に満ちた笑顔につながる可能性があります。
当院では、一人ひとりのお子さんに最適な治療計画を立て、親子で安心して治療を受けられる環境を整えています。
お子さんの歯並びや口呼吸が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。早期の診断が、お子さんの健康な未来への第一歩となります。
池田歯科医院では、お子さんの将来を見据えた小児矯正を行っています。無料相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。



